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AI側によるWebのツール化

制作・開発
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Z. Xingjie

AI側によるWebのツール化

前回はWeb側に生成AIを組み込む方法をご紹介しました。
今回はその逆で、AI側によるWebをツール化する考え方をご紹介します。
AIを入口としてMCPなどのプロトコルを活用し、Webをツールとして扱い、
ユーザーが必要とする情報やサービスをAI側で提供します。

主導権の争い
Web←AI と AI←Web

従来型:Web主導

Webが大規模言語モデルのAPIを呼び出し、ユーザーインターフェースとして機能するアプローチです。

  • 特徴:Webが主導権を持つ構造です。
  • 利点:既存のWebエコシステムと高い親和性があります。
  • 課題:AIの能力がUIやフローによって制限される可能性があります。

革新型:AI主導

AIエージェントがWebリソースをツールとして活用し、自律的にタスクを実行するアプローチです。

  • 特徴:AIが主導権を持つ構造です。
  • 利点:高度な自律性と柔軟性を発揮します。
  • 課題:制御や監査が複雑になり、挙動の予測が難しくなります。

ケース例:ニュース要約から業務実行まで

WebがAIを呼ぶ場合

  • 要約生成ボタンを押す → AI APIを呼び出す → テキストを生成します。
  • メール下書き生成ボタンを押す → AI APIを呼び出す → 下書きを作成します。
  • ユーザーが手動で送信・予約を行います。

AIがWebを呼ぶ場合

  • 検索ツールで最新ニュースを取得し、要約を生成します。
  • メール送信ツールで配信し、カレンダー予約ツールで会議室を予約します。
  • AIが複数ツールを協調させ、業務を自律的に遂行します。

入口のシフト:AIがユーザーの起点に

従来は「WebがAIを呼ぶ」設計が主流でしたが、今、ユーザーの入口はAIへと移行しています。 企業Webは「AIから参照・呼び出しされる」ことと、「AIエントリーポイントのユーザーへ直接サービスを提供する」ことの二軸で再設計が必要です。

AI側から参照される設計

  • MCP準拠のツール定義(名前・引数・戻り値のスキーマ化)を整備します。
  • 構造化レスポンス(JSON Schema/JSON-LD)で機械可読性を担保します。
  • 認証・権限・レート制限(OAuth/スコープ/バックオフ)を明示します。
  • 原子化インターフェースで再利用性を高めます。

AI側への直接サービス提供

  • 対話を前提とした短いステップで成果に到達します。
  • OpenAIはチャットから外部アプリを直接利用できる機能を提供しています。
  • AIで開くディープリンクや「MCPで呼ぶ」エンドポイントを案内します。
  • AtlasなどAIネイティブブラウザでの利用を想定したUXを設計します。

OpenAI 既存のWebサービスをAI化

ChatGPT Atlas:既存webのブラウザAI統合

ChatGPTをコアに据えたAtlasは、既存のWebサービスを一切改造することなく、ブラウザレベルでAI機能を統合します。Web側での適配作業は不要で、ページ文脈の理解とタスク補助を自動的に提供し、AI側でWebをツール化する革新的なアプローチを実現しています。

GPT Actions:既存APIのAI統合

GPT Actionsは、既存のWeb APIサーバーをOpenAPI形式で記述するだけでChatGPTに統合できる仕組みです。外部サービス側での特別な改修は不要で、AI側でFunction Callingとして呼び出し、リアルタイムデータの取得や業務プロセスの自動化を実現します。

Apps Inside ChatGPT:既存WebアプリのAI統合

Apps SDKにより、既存のWebアプリをChatGPT内で直接操作できるインタラクティブな体験を提供します。Spotify、Canva、Zillowなどの既存Webサービスがそのまま統合され、会話の文脈に応じて自動的に提案・起動されます。

未来展望:AIネイティブなWebサービスの再設計

MCP準拠のツール定義

Model Context Protocolに準拠した機械可読なツール記述により、AIが自動的に機能を発見・理解・実行できる標準化されたインターフェースを提供します。

原子化インターフェース設計

複雑な機能を原子操作に分解し、AIが柔軟に組み合わせて複雑なワークフローを構築できる粒度の細かいAPIエンドポイントを設計します。

AI発見可能性の最適化

ツール登録センターへの自動登録と意味的検索に対応した記述により、AIが適切なタイミングで必要なサービスを発見・選択できる仕組みを構築します。

AI実行環境での安全性担保

細粒度権限制御と操作監査ログにより、AIによる自動実行でも安全性を確保し、必要に応じてユーザー確認を求める標準化された仕組みを実装します。

まとめ:AI主導時代への適応

変革の本質:ユーザー接点の根本的シフト

従来の「Webサイト→ユーザー」から「AI→ユーザー」へと顧客接点が根本的に変化しています。企業Webサイトは「AIから呼び出されるツール」として再設計が必要です。

短期

  • OpenAPI仕様書の整備と対応
  • 構造化データ(JSON-LD)の実装
  • 既存APIの原子化・細分化改修

長期

  • MCP準拠のツール定義標準化
  • AI発見可能性の最適化設計
  • セキュリティ・監査体制の構築