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欧米豪圏向けのインバウンド施策における失敗事例

ジャパンガイド
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Y. Takakura

弊社は、月間UU数約230万人の訪日ポータルサイトjapan-guide.com(以下、ジャパンガイド)の国内総代理店を務めています。

自治体やDMOによるインバウンド施策のうち、成功事例はプレスリリース等で広く共有される状況にあります。
しかし一方で、失敗事例を目にすることはほとんどありません。
今回は過去にジャパンガイドで実施した事例のうち、思うような効果が出なかった施策をご紹介しつつ、その理由・要因について言及していきたいと思います。

今後施策を検討する際に、みなさんのご参考になれば幸いです。

意外にアクセスが伸びなかった、お祭りに関する記事

過去に某自治体様より全国規模のお祭りを欧米豪圏向けにプロモーションしたいというご相談をいただいたことがあります。

ジャパンガイド内、Fool’s Dance at Koenji Awa Odoriのページより

非常に特色のあるお祭りであるため、欧米豪圏のユーザーには惹きが強い記事になるのではないかと想定していました。
しかし、フタを開けてみると平均を下回るアクセス数で着地するという結果となりました。

常時体験できるコンテンツではない

では、なぜアクセスが伸びなかったのでしょう。
考えられる要因の一つとして、開催期間があげられます。

この時取り上げたのは8月末の2日間のみ実施されるお祭りでした。
ご存じの通り、欧米豪圏からの旅行者はその他の市場(東アジア、東南アジア等)と比較して、訪日が初めてという方が多く、かつリピーターの割合も少ないというのが現状です。
対象が訪日リピーターの多いアジア市場であれば、違う結果となっていたかもしれません。

しかし、欧米豪市場には、「一生に一度の日本旅行」という人が多く存在します。そのため、自らの訪日時期と重ならない期間にしか開催されないお祭りには興味を示さなかったのではないかと推測できます。

訪日初心者が大半を占める欧米豪市場

またもう一つの要因として、そもそも欧米豪圏の旅行者はこのお祭りを知らない、ということがあげられます。

前述の通り、「一生に一度の日本旅行」という方が多い欧米豪圏からの旅行者の間では、ステレオタイプ的な日本に対するニーズが他の市場よりも高い傾向にあります。富士山や新幹線、神社仏閣、お城、京都の古い街並みといった、彼らがイメージする通りの日本の風景を見たい、体験したいという思いが強いのです。

今回の取り上げたのは日本人であれば誰もが知っているお祭りですが、日本から遠く離れた国においては、おそらく日本文化を研究している等、日本に詳しい方にしか認知されていません。
広く認知されていないコンテンツのみにフォーカスしたことにより、想定していたよりも閲覧がされにくくなったものと考えられます。

欧米豪におけるバナーの事例

上部2つのバナーは代理店から支給されたもの、下部2つのバナーはジャパンガイドの欧米豪圏ネイティブスタッフによるコンサルティングを取り入れたもの

同様に、欧米豪市場の特性が色濃く反映されたのがこちらの事例です。

当初、代理店から支給されたバナーを利用してプロモーションを実施していました(上部の2つ)。
しかし、思うような効果が出ませんでした。
その後、ジャパンガイド編集チームの英語ネイティブスタッフにヒアリングを実施し、バナーを差し替えました(下部の2つ)。すると、当初の2倍のクリック率となりました。

上部2つのバナーは「かまくら」や「なまはげ」という、一見、クリックされやすそうな素材です。
しかし、こちらも先のお祭りの事例同様、「そもそも、それらが何かわからないので、クリックが避けられているのではないか」というのが欧米豪圏のネイティブスタッフから出てきた意見でした。

一方、差し替えた後のバナーは「雪化粧のなかの白濁の露天風呂」という欧米豪の方がイメージする通りの日本の風景です。
そのため、積極的にクリックがなされていたものと考えられます。

対象市場のネイティブからの協力を得ることの重要性

私自身、2015年からさまざまな自治体、DMO、中央省庁の公共事業に従事し、ジャパンガイドのネイティブスタッフと一緒に事業に取り組んでいます。
しかし、いまだに「彼らの視点はわからない、そして同じ視点を持つことは、この先もできないだろう」というのが正直なところです(「ネイティブ目線はネイティブにしかわからない」ということはわかりました)。

欧米豪圏のインバウンド施策で失敗しないためには、地域にいるネイティブの方々に協力を仰ぐことが重要です。
もしくは、ネイティブがいないという場合でも、大手口コミサイト等の書き込みを参照するなどし、彼らのニーズをとらえることが重要です。